夏祭り

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「わあ!凄い凄い!杉本くんにこんな特技があるなんて知らなかったよ!」 そんな健司に、拍手と声援を送った理恵。 当然だというような表情を浮かべてこちらを見た健司が……驚いたような表情に変わり、ビクッと身体を震わせて、出目金が乗ったポイを水の中に落としてしまった。 「あ、もったいない!」 何に驚いたのかはわからないけど、せっかく取れそうだった出目金を逃がしてしまうなんてね。 思わず声が出ちゃったよ。 「お、おお……エンジェル……」 「え?何?なんて言ったの?」 「い、いや……な、何でもないんだ。な、鳴戸さんもやってみない?」 健司は上手く誤魔化したと思ってるようだけど……私はしっかりと聞こえちゃったよ。 まさか、浴衣姿の理恵を見て好きになっちゃったとか? それにしても「エンジェル」だなんて。 同じクラスだったのに、今まで何とも思ってなかったのかな? そんな微笑ましい健司と理恵とは対照的に、高広と翔太は悪戦苦闘。 二人して金魚と睨めっこをしていた。 「何なのこいつら。バカな事に必死になっちゃってさ。健司に分けてもらえば良いだけなのに」 その光景を、冷静に見る留美子。 「ほんとだね。でも、こういうの嫌いじゃないかな。友達といるって感じがして、楽しいよ」 「……ま、そうだけどね」
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