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そうだ……あの時、高広のおじいちゃんが亡くなって、しばらく落ち込んでいたんだ。
そんな高広に、何もしてあげる事が出来なかった私は、何かあったらいつも慰めてくれていたお返しにって、こうしたんだよ。
「ねえ、高広。ちょっとこっちを向いて」
「ん?なんだよ」
足を止めて高広に呼び掛けると、高広は振り返って私の方を向いてくれた。
やっぱりその顔は少し暗くて、元気がないものだったけど、何とかしてあげたくて。
私は手を伸ばして、高広の頭をそっと撫でた。
「ほら、落ち込まないで。元気を出して」
ニッコリと笑ってそう言うと、高広は慌てて顔を背けた。
「バ、バカか!こ、こんな所で何……」
腕で顔を隠すようにして私に背中を向ける。
「え、だって、高広が元気がなかったから、昔みたいにしたら元気になるかなって。ダメだった?」
これ以外に、元気になる方法なんて思い付かないんだけどな。
「ダ、ダメとかそう言うのじゃなくてだな……てか、俺はガキかよ。子供扱いするんじゃねぇっての。大丈夫だからよ」
「あははっ」
「……なんだよ、笑うなよ」
高広は口を尖らせてそう言ったけど、笑いたくもなるよね。
だって、あの時と同じ反応をしたんだから。
昔から、全然変わってないよ、高広は。
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