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そんな声も、ところどころ花火の音にかき消されて。
留美子と高広がはしゃいでいるようにしか見えない。
お互いにバカな事を言っているけど、それは相手をよくわかっているから言える事なんだよね。
「よし、決めた」
「え?なんか言った?」
ドンドンと身体に響く音で、私の声なんてほとんど聞こえないはずだけど、理恵が耳に手を当てて聞き返す。
「うん。私から皆への願い事が決まったんだ」
「あ、やっと決まったんだ。それで、どんなお願いを聞けばいいの?」
理恵はそう尋ねたけど、私はフフッと笑って誤魔化して。
皆が花火を見上げているその前に立ち、振り返って顔を見回した。
こうしてみると、光に照らされて皆の顔が良く見える。
絶え間なく、背後の空を光の花が彩って、私が何を話しても絶対に聞こえないだろう。
今日が本当に楽しかったから。
また、こうして集まって遊べたら。
そんな想いを込めて、私は口を開いた。
「また、来年も一緒に来ようね」
花火の音でかき消された、私のささやかな願い事。
誰の耳に届いてなくても、私の心の中に残っていれば良いと、満面の笑みを見せた。
この三ヶ月半後、私達は占い師が言っていた「大きな試練」に巻き込まれる事になるけれど……それはまた、別のお話。
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