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「だったらお前は、こんな所で何してんだよ。水泳やってんなら、お前も授業に出ろよ」
机に伏せたまま顔を上げ、プールの方を指差して見せると、翔太は痛い所を突かれたとでも思ったのか、口をポカンと開けて黙ってしまった。
何しに来たんだこいつは。
まさか俺に文句を言う為だけに来たわけじゃないんだろ?
となると、こいつもサボりだよな?
「翔太、お前もサボりなんだろ?だったらかてぇ事言わずにのんびりしてろよ」
「お、俺は断じてサボりじゃない!そう、今はまだ泳げないから、この夏に特訓して泳げるようになって、『カナヅチ翔太』という汚名を返上してやるんだ!今はそのイメージトレーニングをする時期なのさ」
フフッと笑ってメガネを指で押し上げる翔太。
こいつ、頭が良いのか悪いのか、マジでわからねえぜ。
こういう頭でっかちは、言うだけで絶対にしないんだよな。
「無駄な努力ご苦労さん。イメージトレーニングでもなんでも、勝手にやってろ」
そもそも夏休みが明けたら、水泳はないからな。
汚名を返上出来るのは、来年の夏になるな、うん。
「くっ!運動が出来るからってバカにして!」
きっと、人にバカにされる事に慣れてないんだろうな。
だから、ちょっとした事でムキになるし、すぐに人を見下すんだよ。
ま、俺にはどうでも良い事だけどよ。
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