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この世とのお別れに
最後に気持ちを伝えたくて
僕は神様にお願いして二人が出会った場所へとやって来た
時間は限られている。
甘い香りの漂う先には
可愛い彼女と真っ赤なワイン
モジモジしながら
栗色の髪をクルクル人差し指で纏めては放す仕草が
物言いたげで
大きな瞳が上目遣いに僕を見つめる
ぷっくりと艶のある小さな唇
黙ってじっと話を聞いてくれている
まるで子鹿のような君は僕の心を放さない
今こそ伝えようこの想い…
緊張する、なんでもいいから何か飲みたい
「マスター、一杯くれないか」
彼女を見つめたままゴクゴク飲み干すと
爽やかに喉を潤わせ
ほんの少しだけ緊張もほぐしてくれた
「あれ…塩?」
コクリと頷き寂しそうにうつむくマスター
"誰か助けて~"
そして僕は成仏した。
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