君じゃなきゃ、ダメなんだ。

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なんで? どうしてわかってくれないの? いつもそう。文則(ふみのり)ってば私の事、バカにしてるんだわ。 付き合ってもう五年が経って、結婚だって考えていた。 私は文則との幸せな未来を夢見てた。 狭くていい、スーパーに近いアパートを借りて。裕福じゃなくていい、ふたりで食卓で向かい合って、同じ料理を食べられたら。 そしていつか、いつか家族が増えたら……。 私ばっかり夢を見てるみたいで、文則は仕事ばかり。休みの日は家で寝てるとメールが送られてくる。 たまに出かけても仕事の電話がかかってきて、私はその度に虚しさを感じていた。 ……もう、終わりなのかな。 一緒に過ごしてきた五年という、けして短いとは言えない時間。 友達とのランチよりも文則との映画を優先して、両親との旅行よりも文則とのドライブを優先した。 もちろんそれは、楽しい時間だったし、文則と一緒に過ごした事を後悔なんてしていない。 でも、もう限界だった。 文則と一緒にいるのが、辛かった。 ため息を吐く回数が、日に日に増えていった。
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