第1章

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僕は体調が優れない どの病院で診察を受けても 原因がはっきりと分からない。 ふと、 昔から近所で評判の良い医師の名前を思い出した 果たして予約は取れるのだろうか、 藁をも掴む思いで検索して電話を掛けてみると 「お待ちしていただくお時間が掛かりますが、よろしいでしょうか」 仕方がない、当然そうだろう。 そこは、趣のある古めかしい個人病院で 不思議なことに待合室には誰もいない…… ベテランの看護士が受付も兼任している様で とても穏やかで、静かな声でそっと囁いた 「こちらで暫くお待ちください」 コチコチコチコチ 薄暗い診察室で経過する時間はとても長く感じる ギィ、ギィィィーーー 奥の扉がゆっくりと開いた カツン…カツン…カツン…カツン…カツン…カツン 白髪の医師は歩くのがとても遅い ゆっくりと椅子に腰を掛け 背中を丸めて、じーっと床を見つめたまま 「お名前は?…え?聞こえないですよ~」 まだ言っておりません… 脈を測る指が小刻みに震えている 「あなた、脈が速過ぎますね~」 準備中の検査機器のスイッチを3回ほど押し間違えている そして、震える手で血液検査の注射を取り出した "誰か助けて~" 僕は心の中でそう叫んだ。 image=500007900.jpg
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