第1章

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私達は荷物の蓋を開け中を見る、無線機だった。 無線機のスイッチを入れると、スピーカーから声がほとばしる。 「………………聞こえますか? こちら飛翔学園コミュニティーの偵察隊です。 聞こえますか?」 私達は皆、歓喜の声を上げた。 7年ぶりに聞く、私以外の成人男性の声。 無線機のスイッチを操作して返事を返す。 「き、き、聞こえます」 「返事だ! 」 向こう側でも無線機を持つ男性の周りに人がいたようで、「返事だ」の声の直ぐ後に、数人の男女の歓声が響いてきた。 「よく聞いてください。 私達偵察隊は、今あなた方の下に向かっています。 ただ、私達の安全を確保する為、夜間の行動を控えています。 ですから、そちらと合流出来るのは明日になります」 私は、私の周りで無線機からの声を聞き逃すまいと、固唾を呑んで見守っているお母さんたちの1人に無線機を渡し、その場から少し離れる。 「(これで、子供達に教育を受けさせる事が出来る。 お母さんたちに、年相応の婿様を見つける事が出来る。 私は………………私は、無神論者です。 で、でも、言わせてください。 神様感謝します)」 私は、7年ぶりに若い男性との会話を楽しむお母さんたちを横目で見ながら、見知らぬ明日を夢見て、手を合わせ北の方角を拝んでいた。
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