第1章

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この市役所は、去年新築されたばかりの新品。 3.11の地震で前の市役所が痛手を受け、前の市役所の3倍はあろうかと思われる市役所が建てられた。 塀の周りを1周して来て起点に戻り、続いて、市役所内の点検を始める。 市役所の広い敷地内の地下には、3.11の教訓から核シェルターが造られていて、市職員や市役所周辺住民約1万人が、1週間程避難を続ける事が出来るらしい。 同じように3.11の教訓から、市民約5万人が1日2食で10日暮らせるだけの、食料と水に生活必需品が備蓄された倉庫もある。 地下の核シェルターに続く扉や、備蓄品が納められている倉庫の扉を点検して、一度控え室に戻り冷蔵庫の麦茶を飲む。 休日来所者用窓口と休日夜間診療所がある棟から、複数の若い女性の笑い声が聞こえて来る。 麦茶を飲み終えてから、通路に出てそちらの棟を覗く、今日は来所者や診療所を訪れる人が少ないのか、上司を含む2~30代の女性6人が笑い声を立てていた。 上司に業務の交代を伝えようとしたが、駄目だ、あんな姦しい中に入って行けない、私は踵を返し、残りの業務を開始する。 息も絶え絶えになりながら、8階の点検見回りを終え屋上の扉を開けた。 屋上では3人の電気技師が汗を流しながら、ソーラーパネルの点検を行っている。 「ご苦労様です」 近くにいた電気技師の1人が返事を返してきた。 「あ、見回りご苦労様です」
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