第1章

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あれから7年後。 籠城を始めて7年も経ってしまった。 直ぐ助けが来ると思っていたが、助けは来ず、籠城している人数も若干増えている。 私はモップの先端を尖らせた槍を片手に、鉄格子状の塀の内側を巡り、格子の隙間から腕を差し伸べるゾンビの頭に、槍を突き刺す。 あの日から私の業務は変わる事が無く、市役所と市役所外を隔てる塀の見回りが、日課になっている。 ゾンビの頭から槍を引き抜いた時、頭上から声が響く。 「みんな――! 早く来て――! 」 市役所の屋上から市役所の外を監視していた、お母さんたちの1人が、腕を北の方角に突き出し叫んでいる。 お母さんの声と共に、ヘリコプターの爆音が私の耳に聞こえてきた。 私は私の肉体が許す限りの速さで、階段を駆け上がり屋上に辿り着く。 屋上に辿り着いたのは私が最後のようで、お母さんたちや子供達みんなが、空に向けて手を振っている。 皆が手を振る先を私も見上げた。 見上げた先には、米軍のマークを付けたヘリコプターが旋回していて、操縦手が身を乗り出して、手を振り返しているのが見える。 私は年甲斐も無く、皆と同じように大声を上げ、ヘリコプターに手を振った。 ヘリコプターから小さな荷物が吊り下げられ降ろされてくる。 私達は荷物を受け取り、ロープを外す。 ロープが引き上げられ、ヘリコプターは機首を北に向け、飛んで来た方角に戻って行く。
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