茜色帰り道

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*** 「家、ここだから」 「おう」  ごく普通のマンション。これがあたしのおうちだ。  二週間前に引っ越してきたばかりなので、まだ周りのことはよく知らないけれど、駅から遠すぎるわけでもないし、近くにはいろんなものがあるし、あたしも両親も満足している。  手を離すと、大志は携帯を取り出した。 「連絡先」  きっと何を言っても聞かないだろうから、あたしも大人しく携帯を取り出して、電話番号と連絡先を交換する。 「明日、朝8時。迎えにくるから」 「結構です」  大志が言い終えると同時に断りの言葉を瞬時に放つと、信じられないと言った表情でこちらを見てくる。 「お前、この俺様が迎えに来てやるって言ってるんだぞ」 「知らないわよ、そんなの」  俺様だろうが学校では有名人だろうが、こっちは知ったこっちゃない。  朝のたくさん人がいる時間帯に一緒に行くだなんて、まっぴらごめんだ。絶対注目の的になることは目に見えてる。
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