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「おい、ひよっこ」
……飛んで火にいる夏の虫、とはこういうことを言うのだろうか。
「……なんで来てるのよ」
ドアの方からあたしに声を掛けてきた大志は、迷いなくあたしたち三人の方に向かってきた。
「うわーホンモノ」
「間近で見てもかっこいいね、青海くん!」
加奈子はなんだか一歩引いた感じで、千佳はアイドルを追いかけるような目で大志を見る。
「こんにちは。ちょっとコイツ借りてもいい?」
「もちろんどーぞどーぞ!」
あたしをそう言って指さす大志に、千佳がぶんぶんと首を振った。
「ちょっと!千佳!!!」
あたしが千佳を信じられないと言った目で見ると、千佳はエヘっと舌を出しておちゃめに笑った。
「弁当持て。行くぞ」
そう短く言うと、すたすたと大志は歩き始める。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
いつのまにか廊下の外にできていたギャラリーは、あたしたちのことを不思議そうに眺めていた。
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