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「一度、こんな風に屋上でお弁当食べてみたかったんだよね~」
現金だとは思うけれど、さっき連れ出された時の不満感が嘘のようだった。
「喜んでくれたならよかった」
そういうと、大志は今までに見たことのないような優しい笑みで、あたしに微笑みかけた。
――不覚にも、少し自分の鼓動が早くなるのが分かる。
あたしは、そんな自分がばれないようにと、下を向いてお弁当を広げた。
「うまそう」
「お、お母さんが作ってくれてるんだ!」
お母さんが早起きして、あたしとお父さん、そして弟の分のお弁当を作ってくれる。
お母さんのお弁当は、いつもおいしいし、家族のことを思って栄養バランスのとれた絶妙なお弁当になっている。
「大志のお弁当も、すごいおいしそうじゃん」
見ると、大きなお弁当箱に色鮮やかな具が所狭しと詰まっている。
「これはまあ、シェフが作ってるからな」
……シェフ?
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