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月明かりに照らされた部屋に一筋の鋭い光が走る。
その部屋で、一人の少年が息を荒くし、鋭く光る刃物を握っていた。
「こんな世界ともおさらばだ。」
そう言って少年は刃物を自分のお腹に向けて勢いよく突き刺そうとした。
*
キーンコーンカーンコーン
「起立!気を付け、礼っ!!」
いつものように学級委員の号令で授業が終わり、休み時間になる。これまたいつものように休み時間になった途端、賑やかになる教室。こんなどこの高校でも当たり前の景色の中、授業中も休み時間も登下校と移動教室以外全く席を動かない人物がいる。これもどこの高校でもクラスに一人はいる休み時間になると机に伏す奴。それが僕、織田幸太なのだ。
僕は“ぼっち”だ。入学してからずっと“ぼっち”だ。クラスの皆からはすでに“空気”扱いなのだ。
*
放課後。"空気"の僕は誰の目にも触れずに帰路につく。
そして、ここは大福神社。
ここに寄り道するのが僕の日課だ。
チャリン
『神様、僕もみんなみたいに普通の学性生活を送りたいです。お願いします。』
そうお祈りして再び帰路につくのだった。
*
僕は母子家庭だ。母は昼と夜、仕事に出ていて朝しか顔を合わせない。だから、帰るといつも冷めたおかずが置いてある。それを電子レンジで温めてひとりで食べる。
そんな生活の中、今日は二週間ぶりに心の闇が僕に襲いかかった。
夜ごはんを食べて片付けたあとのことだ。
突然、僕の頬に冷たい何かが流れる。気がついたら部屋は薄暗く、月明かりに照らされていた。
そして、僕は刃物を握りしめていた。
「今日こそ、今日こそオレは死んでやる?ハハッ、こんな世界ともおさらばだ。」
息荒く、どこか,寂しそうに僕はそう言って、刃物を自分のお腹に向けておもいっきり突き刺そうとしたその時だった。
ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
驚いて、刃物を落とした僕は、涙でぐちゃぐちゃの顔で
「…また、また死ねなかったぁぁぁぁ。」
と叫び泣きながら崩れおちた。床に零れる涙を見ていた僕がふと顔をあげると、そこには、胡散臭い顔で帽子をかぶった見知らぬ男がこちらを見つめていた。
「どうも~。私、絵馬と申します。あなたを幸せにするためにやってきました。さぁ、共に開運人生を目指しましょう。」
と咄嗟のことで驚いて声が出せずにいた僕を見つめて薄笑いでソイツはそういった。
これが、僕とアイツの出会いとなったのだ。
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