第1章

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「ねえ、見てよ。潮が引いてるね。聖堂の外、歩けるんじゃない?」 「そうだな。今日は外で書いてみようか」  モンサンミッシェルは海岸沿いにあり、潮の満ち引きで城外を歩けるのだ。今日はたまたま潮が引いているようで俺達の気分をさらに上昇させていく。  夜、密会をするのに都合がいいからだ。俺達は最後の終止符を打つために今夜、お互いの裸体をここで書くことを決めている。  俺達は昼間、恋人のように手を繋ぎ、聖堂の中を見学した。そして夜が来るのをひっそりと待った。 「え、本当に外でやるの? 見つかったらどうするのよ」 「アートだっていえばいいじゃん」  俺は彼女を城壁に連れ込み体を弄った。彼女も満更ではなさそうにポーズを決めてくれる。 「いいね、最高に綺麗だ」 「褒めても何も出ないわよ」 「何も出なくていい、その姿を描きたいんだ」  俺はそういって彼女の服を脱ぎ捨て裸体に絵の具をつけた筆を這わせた。今日で最後になるかもしれないと思うと、そのままスケッチするのは勿体ないと感じたからだ。夜だからこそ色は映えないが、絵の具の質感が彼女を立体的に見せることに成功していた。彼女の曲線美を追求するために俺は夢中で筆の動きに集中する。
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