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なんちゃって不良心得その一
――不良を演じるのなら中身から!
その日僕(・)は青く晴れ渡る心地の良い気候にも関わらず、寝汗をベットリかき最悪の気分で目を覚ました。
まるで不吉事を暗示するかのごとく。
その通りだった。
ぼーっとする頭を掻きむしり二階にある自分の部屋から壁にぶつかりながら一階の洗面台へと向かう。
歯を磨き、顔を洗い目付きの悪い自分を鏡に映す。
あーやっぱり目付きわりーなー。
整髪料を髪に塗りたくりオールバックにびしっと決める。それが高校に入ってからの朝の日課になっている。
実に不本意だ。
洗面台で鏡とにらめっこしていると廊下をぱたぱたと駆ける音、十中八九母親だ。
何故ならこの広い家に母と僕との二人でしか住んでいないからである。
「ちょっとぉ? スバル! あんた遅刻するよ」
「わかってるよ! 今行く!」
母の呼びかけにゆったり準備していた僕は早々と準備をこなしていく。
頬をぱんっと叩きまじないの様によしっと喝を入れる。
家を出れば僕は僕ではいられない。
決してオタクとバレない様に、波風立てず慎みを忘れずに!
自身で掲げたキャッチフレーズと共に今日ももう一人の俺(・)を演じ切る!
玄関先でスバルっ! と声を荒げる母親にやばっと胸をひやりとさせて同じく
僕も家を飛び出していった。
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