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不意に、
「そこの人殺し」
そうそう、このあだ名……って、
「俺をその名で呼ぶんじゃ……、――っ」
後光に照らされて現れたのは救いの女神だった。
力強い薄茶色の大きな瞳、青みがかった艶やかな黒髪を肩に掛け、朱色のセーラー服を校則通りに着用しているにも関わらず、それでいておしゃれさを感じさせる腕組み姿の細身の美少女。
幼馴染という名の赤の他人、春野(はるの)椿(つばき)。
「つばきーーーーーーーー!」
涙目になりながら椿に飛びつこうとする俺を椿はミルコ・クロコップ顔負けのハイキックで迎撃。
教室の窓からこの光景をみた生徒は思うだろう。変態がやられたと。
生徒会副会長、剣道部主将にして俺の秘密を知る唯一の人物。
「キモイからさわんないでくれる? オタク君」
振り上げた右足をたんっと華麗に着地させ侮蔑(ぶべつ)の眼差しでこちらを見る。
地面に倒れた俺は頭に響く蹴りのダメージとスカートからすらりと伸びる椿の
黒タイツに覆われた萌える足に俺の脳は大打撃。
それに気づいた椿はクールにスカートに手を当てて虫けらを見るような目でこちらを見た。
やめろ、そんな目で俺を、僕をみるな!
潤んだ瞳で椿を見あげる僕に椿ははぁ~とため息交じりに、
「あんたがこうしてる理由は分かるわ。入れないんでしょ? 教室に」
うんうんと頷く。
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