第一章 花咲スバル

7/17

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
不意に、   「そこの人殺し」   そうそう、このあだ名……って、 「俺をその名で呼ぶんじゃ……、――っ」 後光に照らされて現れたのは救いの女神だった。   力強い薄茶色の大きな瞳、青みがかった艶やかな黒髪を肩に掛け、朱色のセーラー服を校則通りに着用しているにも関わらず、それでいておしゃれさを感じさせる腕組み姿の細身の美少女。 幼馴染という名の赤の他人、春野(はるの)椿(つばき)。   「つばきーーーーーーーー!」   涙目になりながら椿に飛びつこうとする俺を椿はミルコ・クロコップ顔負けのハイキックで迎撃。   教室の窓からこの光景をみた生徒は思うだろう。変態がやられたと。   生徒会副会長、剣道部主将にして俺の秘密を知る唯一の人物。   「キモイからさわんないでくれる? オタク君」   振り上げた右足をたんっと華麗に着地させ侮蔑(ぶべつ)の眼差しでこちらを見る。   地面に倒れた俺は頭に響く蹴りのダメージとスカートからすらりと伸びる椿の 黒タイツに覆われた萌える足に俺の脳は大打撃。   それに気づいた椿はクールにスカートに手を当てて虫けらを見るような目でこちらを見た。   やめろ、そんな目で俺を、僕をみるな!    潤んだ瞳で椿を見あげる僕に椿ははぁ~とため息交じりに、   「あんたがこうしてる理由は分かるわ。入れないんでしょ? 教室に」   うんうんと頷く。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加