第一章

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 自分を、似内練豆(にたないれんず)という中学二年の男子生徒と口にするのはたやすいけど、それは僕を構成する一部でしかない。  確固たる自分を見いだすべく、僕はアシナガたちと生活している。  この三人ぽっちの生活共同体にはいちおう、れっきとした名前がある。  会敵同盟。自らの敵に会い、倒すことを目的とし、そのための相互扶助を惜しまぬ精神のもと活動中である。……そのはずだが、はたから見ても戦っているようには思えないだろう。  そもそもここでいう『敵』とはわかりやすい、『どこそこにいる何某という者』ではない。僕の場合で言うなら前述のような自らの内側に棲んでいる何かなのだ。  自己の基盤の安定を欠いているがゆえに突如として襲いくる漠然とした不安感とか焦燥感やら、自分がいる場所は正しいのかとかそういうもやもやを指して『敵』と呼んでいるに過ぎない。  もっともこれはあくまで僕の敵であり、一見してそんなものはいなさそうなアシナガにだって敵と定めた何かがいるから、この会敵同盟を発足させたのだろうし、篝の敵はきっと僕のそれと同系統の何かだ。
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