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台所からアシナガと篝がそろって出てきた。
「おはよう、ネリー。おれも驚いたんだがな、どうやらその娘とは会話が成立しないみたいなんだ」
「なんか話しかけてはきたな。なんだろうあれ『前にいるの』って。見たらわかるっての」
「答えても無反応だし、いまだってときどきまばたきするだけで直立不動だ」
「わけがわからん」
篝が首をかしげるが、僕はもっと根本的な疑問を投げかける。
「というかこの人は誰なんだ」
「知らない」
アシナガは即答した。
「は? アシナガの知り合いじゃないのか?」
「昨日の夜中、ごみ捨て場の前でぼけーっと立ってたから拾ってきた」
「何やってんだ!」
「落ち着けネリー。こいつもきっとおれたちの同胞だよ」
「きっとってなんだ!? 確証を得てから連れてこいよ!」
「確証を得ようにもこてんぱんにやられてんだろ、これ」
一見して外傷は見当たらないし、どこかを痛がっているようすもない。僕がナソーさんに目をやった理由を悟ってアシナガは付け足す。
「敵だ、この娘が正常に生きようとするのを阻む存在にやられたんだよ。見た目でわからないのは当然だ、精神になんらかの異常をきたしてこんなふうに障害が発生しているだろうからな。会話すらまともにできないほどのものだし改善は難しいだろう。だが、そのほうが燃える」
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