第一章

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「おいおい……どうしろってんだ……」 「報酬は用意する。そうだな、ショートケーキの最初のひと口。それを四口進ぜよう」 「たしかに最初のひと口はおいしいけども、それを四口ってなんだよ」 「要請があればすぐにおれがショートケーキを買ってきて、それをひと口食べてよいこととする。それを四回だ。一日に四回でもいいし、そこにおれがいれば、どれくらいあとでも構わない」 「なるほど、飽食の時代というやつか。せいぜいがんばろう」 「何が『なるほど』なんだ……」  さっそく頭を抱えてしまいそうになる僕だった。 『ネリーは学校だし』という発言が示すように、僕は中学校に通っていた。二年一組の教室の窓際でも廊下側でも真ん中でもない中途半端な位置に座っては昼放課をまんじりとすごしている。  級友らは校庭に赴いていたが、眠気に屈しそうな僕にはとてもじゃないが外に出る気力はない。無気力系主人公の真似事だと自らを納得させながら、晴れない頭にぼんやりと篝たちの姿を浮かべた。  うまくやっているだろうか。……どううまくやれというのか。アシナガも無茶を言うよな……。  アシナガは僕まで当てにしているようすだったが、僕にはそんな技術も余裕もないのだ。他人の敵をどうこうする以前に自分の敵で手一杯である。
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