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ふと、灰色の視線が刺さった。
「うわっ」すごい見ている。石にされてしまいそうな視線だった。急に緊張してしまいぎしりぎしりと悲鳴をあげそうな関節を動かして、携帯をつかみ、ひらく。
初期設定のままの画面をすばやく切り替えて〇のキーを押す。表示された番号を自らの携帯に入力してその場を離れた。
「おまえ……びびりすぎ」
にやにや笑う篝を思わずつねくってやりたくなりながらも、それどころではないと携帯を耳にあてがい、呼び出す。
ナソーさんがぶら下げた携帯から電子音が響き、彼女はそれをゆったりと、よどみない動作で手にとってひらいた。とたんに、ぶつっと電話口からノイズが走り通話状態に変わる。
『わたし、ナソーさん』
「あ、えー」あっさり出た。というか何も考えていなかった。とりあえず原因を探るべきか。
「ナソーさん、いったい何があったの?」
答えはなく通話を切られた。リダイヤル。
『わたし、ナソーさん』
うむ、とりあえず出てはくれるのはわかった。それはいいんだけどなんて問えば会話が続くのかがわからない。
「好きな食べものは?」
とっさに出た質問がこれである。発想の貧困さを情けなく思いつつ返事を待つが、やっぱり切られた。なんだよもう。
篝が僕の手から携帯をひったくり、おなじくリダイヤル。
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