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「わたし、ナソーさん」
「おまえはチョコケーキが好きだな?」
「はい、わたしはチョコケーキが好きなの」
眼前の口がそうつむぐのを聞いて、僕はわが耳を疑う。したり顔でこちらを見る篝はさらに問いを重ねる。
「おまえの家の住所はなんだ?」
しかし、その問いには返答は得られなかった。
「なんで好物を当てられたんだ?」
「そんなもんおまえが取っておいたチョコケーキをおいしそうに食べていたからに決まっている」
「ちょっと待て! それは僕のだろ!」
「おかげで会話のヒントを得られたんだ。ここはがまんしろ」
「結果オーライなだけじゃないか! もういい、あとはまかせたからな!」
憤りを覚えながら自室に取って返す。
「まったく、がらでもないお人形遊びみたいなことともこれでおさらばできるといいがな」
立ち去る僕をもはや気にもせず、篝はひとりごちた。
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