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「おれはあなたをたすけることにした」
そうして差し出された手はやはりきれいなもので、向けられた手のひらをまじまじと見つめてしまう。何がなんだかわからなかったのに、さらにわからなくなってくる。
救助隊員でもなさそうな男に芝居がかった振る舞いをされて、しかも大してキマってはいないと来た。
僕は込み上げてきた笑いをもらす。安堵感のせいもあった。
そうだ、たとえキマってなどいなくとも、それは救いの手と呼べたのだ。
その手のひらへ左手を重ねようとする――――
ちゃんとつかめたかはわからない。そこから先の記憶はなく、つぎに目を開けたとき僕は病院の天井を眺めていたのだ。しかし、僕がつかめていなかったとしても、男の手は僕の手をつかんでいたはずだ。
家族ごっこに夢中で僕自身のことを本当に考えていたとは言いがたい両親はこの事故で亡くなった。そうして僕はまたべつのごっこ遊びめいた連中に加わったのだ。
これまでそうたずねられることは多かった僕だが「なんの真似だ?」と問いかけたのは生まれて初めてのことだったように思う。
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