第一章

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 僕は今週の掃除当番である。めんどうくさい。  そろってカップ麺をすする音を立てる朝食を終えたころ、篝は座卓の端に載っていた回覧板を手に取った。ひらいて中身を確かめる。 「一之木、ボールペンどこだったっけ?」「後ろの戸棚の引き出し、上から二番目」「ん」  うなずいて立ちあがり、戸棚へと歩みかけた足がとまる。 「む、なんだこりゃ『暴行魔に注意』?」  その発言を耳にするや、アシナガはこちらを見やり篝を指さしては、やれやれと肩をすくめる。アメリカンなオーバーリアクションだった。 「おいおい……もうやるなって言ったろう?」 「ワタシじゃない。『もう』ってなんだ、やったこともないわ、人聞きの悪い」 「そうだよな、ガリさん、いい子ちゃんだもんなあ」 「……疑われるのもいやだがその言いかたも腹立つな……。にしても、夜中に歩いているといきなり棒状のものでぶん殴られるんだと。鬱憤たまった子供がストレス解消でもしてんのか。物騒な話だな」 「そのうちニュースにでもなるんじゃないか? ただでさえこの市は変わっているのによけいに目立ってしまうな」 「ほれ、どっちでもいいから出かけるときに隣に回しておいて」  しるしを書き込んだ回覧板を座卓の端に載せると篝は食べおえた容器を片づけてから、「あ、忘れてた」といずこかへ向かう。
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