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「まあ、落ち着けニテナイ。かけらが大きいほど得点が高いんだ」
篝は得意げに言った。
「得点って言ったか? バイトに得点ってなんだよ!?」
「得点が高ければ報酬も増える。うまくすれば十倍だそうだ、しかし、大きく切ると外したときが痛い」篝はようやくついとこちらを振り返り、仰いだ。「というかすでに深爪ぎみで痛い」
「もうやめろよ! ちょっとくらいなら僕の小遣いをやるから! 見ちゃいられない!」
篝は即座に爪切りをやめる。ホウキとチリトリで散乱した爪を片づけ、僕に向けて『まったくこいつは』とでも言いたげに肩をすくめるとため息までこぼした。
「学校に遅れるぞ」
「誰のせいだ!!」
スニーカーに足を突っ込む。靴下ごしに異物感はない。そもそも狙った場所に飛ばすなんて難易度が高いだろうから当然である。
「いやはや、ワタシに小遣いをくれるとはニテナイもえらくなったもんだよなあ。背がでかくなっただけある。はじめに会ったころより八十五ミリくらいは伸びてるよ」
「よくあの食生活で伸びたもんだ」
「いや、感心してないで、もっといいもんを食べさせてくれよ」
「これはおれ流子育て術でな、いまの食生活を貧相にすることにより『大人になっていいものを食べてやる! たくさん稼ぐために勉強しよう!』という反骨心を芽生えさせ、勉強する意欲を駆り立てるのが目的だ」
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