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「バラしてどうする。それでグレられたら元も子もないだろうが」
「えー、そのときはそのときで」
「適当だな!」
「大丈夫大丈夫、だってネリーはグレないだろ?」
「正直に言うとそれどころじゃない感じだよ」
「よしよし。これでもうじきおれの子育て術の正しさが立証される、それを書籍化して印税でひと儲けだ……!」
「あ、グレそう、もうグレそう」
「おれの印税のためにグレてくれるなよ」
「最低か!」
篝は『まったくこいつは』の顔をしたまま繰り返す。
「学校に遅れるぞ」
「たわ言を聞いてる場合じゃない! 行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
べつにアシナガは僕との接しかたを模索する必要なんてないと思うし、模索や印税うんぬんはたんなる冗談に決まっていた。
これでもこの集まり内での関係は良好で、そもそも仲間うちに敵を作っていられるほど僕たちは暇ではないのだ。
そう、敵はもっともっと内側にいる。たとえるならそれは僕のなかで僕の基盤を食い潰そうとするひとつの虫である。
かたちづくろうとした『僕』を端から食らっていくそいつのせいで僕はいまだに自己が曖昧なのだ。
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