カラス避けネット

　世間じゃちょくちょくゴミ問題がニュースになる。
　物を捨てられないあげくに、色んないらない物を拾い集めてゴミ屋敷を作ってしまうとか、指定されていない場所への不法投棄とか、ゴミ出しの時間帯や分類分けによる近隣トラブルなんかもある。
　かくいうウチの近所の集積所も、ゴミ問題を抱えているが、相手は人間じゃなくカラスだ。
　繁殖期のせいで数が増え、正しい出し方をしていても、カラスが寄って来てゴミを荒らしまくるのだ。
　むろん、ネットをかけるなどして対策しているが、カラスの知能はかなり高く、最近じゃ、ネットの下のゴミを荒らす方法を編み出したりもしている。
　どうしたもんかと、近所一同で頭を悩ましていたのだが、ある日突然、カラスの被害がぴたりとなくなった。
　カラスがいなくなったということはない。そこいらの屋根や電線、至る所に止まったり飛び回ったりしている。
　ネットに誰かが細工をしたとかいう話も出ない。そもそもネットは、町内会が用意した物のままだ。
　何が原因だろうねと、みんなして首を捻ったが、害が出ないのはいいことだからと、特に追及はしなかった。
　そんなある日、決められた時間に分別したゴミを出しに行った俺は、目を疑うような光景を目撃した。
　すでに出されていたゴミを狙い、久しぶりに一羽のカラスが降りて来た。そいつがネットに触れた瞬間、切り込みを入れたようにネットが大きく裂けたのだ。
　その裂け目に、鳴き声を残す間もなくカラスの姿は飲み込まれた。