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2nd person
「お迎えに上がりましたお嬢様。」
「えぇ、ありがとう。」
少し退屈そうな表情と声。
この人は白神 セリナ。
私が務めている屋敷の主人の娘だ。
容姿端麗で頭脳明晰。
イギリス人の母親の血が混じったハーフで、世界的に有名な大手企業のご令嬢。
一人っ子であまり喋らず、学校の生徒からも少し遠い目で見られる。
全ての事が自分の思うように進み、刃向かう者は誰1人いない。
だからこうして毎日、死んだような虚ろな目をしているのだ。
正直、運転するだけで高い給料を貰って、しかもこんなに可愛いお人形さんみたいな金持ちお嬢様を毎日拝めるのは、他の職場に比べて最高の職業だ。
おまけに服の上からでも分かるボディーライン
少し身長が低いが、いいもん食って、他ではしないような難易度の高い習い事をしているだけある。
セリナお嬢様は思わず襲いたくなるような、男には理想的な体つきをしている。
俺はいつも、バックミラーを少し角度を下げて、座席に座っているお嬢様の足元が入るようにしている。
だから辞められない。
少しでもこの最高級箱入り人形の機嫌を取れば、お近づきになれるかもしれないから。
自分が異常なのは理解している。
所謂ロリコンの俺からしたら天職なのだ。
「今日は学校で何をなさったのですか?」
「特に何も。いつもと同じよ。」
本当に愛想のない箱入り人形だ。
俺が必死に次の言葉を探し、声にだそうとした時だった。
「ちょっと!なにを考えているのですか!しっかり前を見て!」
その言葉を聞いて、バックミラーからフロントガラスの先を見る。
まだ赤信号の十字路。
車の前には自転車に乗り、レインコートを着た高校生が。
やべっ!と思ってハンドルをきる。
すると車は道路の進行方向に向かって横になり、自転車と共に十字路に入った車とぶつかった。
ぶつかる前にお嬢様の高い叫び声が聞こえた。
一瞬何が起きたか分からなかったが、顔に衝撃があったのは覚えている。
目の前には割れたガラス越しにポールが立っている。
途端に自分の身体が焦りに支配される。
首が痛い。
自分の鼻から何か冷たい物が流れてくる。
指先でその冷たい物を触った後それを確認する。
「やべぇ……やっちまった…」
ハッとして後ろを見た。
車体の後ろは潰れていてお嬢様が見当たらない。
俺はすぐに外に出て、騒ぐギャラリーを無視してお嬢様を必死に探したが、見当たらなかった。
死体どころか、体の一部すら見つからなかったのだ。
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