第1章

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あれから1年後、私は精神科病棟に入院をしている。 何故、どうしてこうなってしまったのか解らない。全ての始まりはたった1つの箱から始まった。正方形の黒い箱に一か所だけ丸い穴が開いていた。 訝し気に見る私に箱に同封されていた手紙には「真実をみよ。これが現実だ」と書かれていて、誰かの悪戯だろうと気にも留めなかった。私には妻がいる。正確にはいた、という過去形ではあった。 あの日はちょうど私の仕事が早く終わり、居間に置かれていた私宛の小包から奇妙な手のひらサイズの箱をどうしたものかと考えながら箱とにらめっこしていた。妻もこのご時世、パートをしていたため、居なかった。 「まぁ、なんてことないただの箱だろう」 特に気に留めることなく箱の覗き穴になっている部分を見てみると、不可思議なことにそこには妻の姿があった。 「どういう仕掛けだ?」 そう思っていると、妻はどういうわけか私の知らない男性と抱き合っている。その姿は私の知らない妻だった。なんとも言えぬ不快感に箱から目を離すと、その辺に置いた。しかし、考えまいとすればするほどに妻の浮気という想像が頭の中を占めていく。 これはいけない。妻が潔白であることを証明しないと気が済まなかった。確かに、最近は仕事が忙しいせいか夫婦の営みもままならなかった。例え誘っても妻がのるきでないことも多くある。 居てもたってもいられなくなった私は、寝室を漁ってみることにした。これと言って浮気の証拠というものは出てこなく、なんとなく釈然としない中でもう一度、不可思議な箱の中を見てみることにした。 箱の中に映った映像はキッチンの収納棚だった。収納する棚の中には見知らぬ携帯電話が置いてある。そんな馬鹿な。そう思いながらも気になった私はキッチンの収納棚を漁ってみた。すると、おかしなことにそこには箱の中にあった携帯電話がそのまま置いてある。 どういう仕掛けなんだ……。そう考えながらも携帯電話をいじってみると、そこには大量のメールが保存されていた。中には写真もある。その写真には妻の浮気相手と妻自身が恋人同士のように手を取り合っていた。 私は雷に打たれたような衝撃を受けて、暫くそこから動くことが出来なかった。これはどうしたら良いのだろうか。余りのショックだったせいか、私は妻が帰って来たのにすら気づかなかった。
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