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しかし、ある日のことだった。いつもいく居酒屋から洒落たバーへ行った際に一人の女性と出会ったのだ。彼女は優しく、私は酒に酔っていた。そのせいか私はついポロッと箱の話をしてしまった。
彼女は半信半疑になりながらも、箱について興味を抱いた様子だった。人間不信でありながらも、私は彼女への劣情を抱き始め、どうにか彼女と深い中になれないかと考えた。
その結果、宝くじの話をするとそこもまた半信半疑な様子で彼女は聞いていた。
駄目もとで「家にこないか?」と、聞くと彼女もまんざらではなかったようで家までついてきてくれた。ああ、私の人生は今、急上昇に良い方向へと昇っているのだろう。
そう思いながら意気揚々と彼女を私の住む家へと招待した。
彼女はしばらく部屋の様子を見ながら、私の自慢話にみみを傾ける。しばらくすると「例の未来が見えちゃう箱ってどこなんですか?」と彼女から話を切り出した。
私は寝室から箱を持ってくると、彼女に自慢げに見せる。
「思ったより、普通の箱なんですね……」
「まぁ、見て見なよ。普通の箱じゃないからさ」
私が自慢げに彼女に箱を渡すと、彼女は恐る恐る箱の覗き穴に目を向けた。しばらく左右に振ったりしながらも、彼女の顔は少し困惑した表情を浮かべていた。何か困った事態にでもなったのだろうか?
「何がみえたの?」そう、私が聞くと、彼女は「何も見えないですけど」と、困った表情で私の顔を見た。
そんなはずはない。彼女から箱を渡してもらい箱の中身を見てみると、そこには包丁をもった彼女が立っていた。身体は血まみれになっていて、丁度見上げるような体制になっている。
そして、しきりにお金の話をしていた。その映像を見た瞬間、私の鼓動は激しく波打ち危機を脳が知らせていた。先ほどまでの酔いとは一変して目の前の女性へ恐怖心を抱いた。
このままだと殺されるかもしれない。
どうしたら良いのだろうか。心配そうにみる彼女を尻目に、帰ってほしいと何度か伝えたが彼女は上辺の優しさなのか、単純にお金ほしさになのか帰ろうとしなかった。語気を荒くして帰れと叫んだところまでは覚えている。
それからの記憶がなかった。警察官の話によれば彼女は急に私が暴れ出して恐ろしくなり、家にあった灰皿で私を殴ったらしい。しかし、思いの他、頑丈だった私は咄嗟にキッチンから包丁を取り出して彼女を刺したのだそうだ。
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