お願いですから何か喋ってください!

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「さて。被告人、リチャル=マグナイヤーさんは、事件当初、本当に現場にいたのでしょうか? 魔具に映されていたものは、貴女ではないのではないですか?」 「……。」 「つ、次に、被害者との関係です。調べたところ、貴女は被害者である八億八千八百八十七人の誰とも関係性がありませんでした。殺害理由は『殺害衝動にかられて』とのことでしたが、首脳や議員、犯罪未遂の者達と、殺害には何かしらの意図を感じられます。どうでしょうか?」 「…………。」 「ああ、あと! 殺害に利用したと思われる魔刀ムサマサには貴女の指紋以外何一つありませんでした。乱戦乱闘になるであろう中、貴女以外の指紋がないのはおかしくはないですか!!」 「………………。」  僕がいくら質問を投げ掛けてもマグナイヤーさんは何一つ口にしない。鉄火面のような表情を崩さず、前だけを真っ直ぐと見つめていた。  こうなる事はあの時から予想はしていた。予想はしていたが、こうなれば対処のしようが無い。 頼むから、頼むから─── 「……最後の質問です。貴女は本当に、八億八千八百八十七人を単独で殺害したのですか? 誰かを、庇っているのではないですか?」  ────────何か喋ってください!  僕の願いが通じたのか、マグナイヤーさんは僕の方に体を向ける。そして。 「…………………………。」  一言も喋ること無く、再度、機械の如く体を真っ正面に向き直した。 「……これで、質問を終わります。」  敗北宣言とほぼ等しい言葉を告げ、倒れるようにして椅子に座る。  僕の態度がどうのこうのというレベルではない。何一つ、彼女の盾作ってあげる事が出来ずに第一回目の裁判を終えることになるのだ。彼女の態度にも大きな原因はあれど、こんなにも役立たずな弁護人はいないだろう。  決意が……揺らぎそうだよ、エリージャ。  会うことができない、愛する女性に脳内で苦言する。    この、人生全てをかけた大舞台に挑むことになったのは、数週間前に起きたあの事件にまで遡る。  
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