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2,青年は言う
「百合……今まで何処にいたんだい?すごく心配したんだから……でももう大丈夫、ずっと一緒にいるから……もう君を離さないよ……」
青年は翠を力いっぱいに抱きしめる
その細腕の何処にこのような力があるのだろうかと言えるほどに力強い
翠は思わず顔をしかめる
「いっ……たい…!離せよ!!」
翠が声を荒らげて青年に言えば青年の顔がくもった
そして翠から離れて言った
「百合……そんな口の聞き方許さないよ?どうしてそんな荒い言葉遣いなんだい?」
「はぁ?!そもそも俺は百合じゃねぇよ!!よく見ろ!男だろ!!」
翠は青年を殴ろうと前にでようとするが首にはめられている首輪がそれを許してくれない
ガシャガシャと鎖が揺れる音と翠の叫ぶ声が部屋に響く
「何を言ってるんだい?百合は女の子だろう?……あっ、そうだ今日は百合の服を買ってくるよ。そうだなぁ……百合に似合う真っ白なワンピースなんてどうかな?」
青年は翠のベッドに腰掛けにこにこと話しかける
口元は笑っているのに翠には心做しか目は笑ってないように見えた
「ふっざけんな!お前何なんだよ!!誰なんだよ!!これ誘拐だぞ!!離せよ!!」
ギリギリ翠の手の届かないところに青年が座っていたため翠は睨み声を荒らげることしか出来ない
でも少し
ほんの少しだけ翠の心は揺れていた
この青年は翠を百合と呼び優しくしてくれる
こんなに優しくされたのはいつぶりだろうか
もっとこの優しさに触れていたい
俺だけを見てほしい
誰かと間違えていてもいい愛してほしい
でもやはり得体の知れない青年が怖い
いくら愛おしい人に似ていてもリスクを犯して誘拐する意味がわからない
もしかしたら俺に恨みのある連中の仕業かもしれない
ぐるぐると色々な感情が頭を駆け巡る
もう訳が分からない
何も考えたくない
急に静かになった俺の目を青年の大きく暖かい手が覆う
「きっと疲れてるんだよ……ゆっくりおやすみ?誰も傷つけたりしないから……」
その青年の言葉を最後に俺の意識は深い闇の中に吸い込まれた
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