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田端翠(たばたすい)は何も無い自分の人生はが嫌で仕方なかった。
趣味も生きがいも家族からの愛情も何も持ってはいない。つまらない人生。
だから少しでもかまって欲しくて髪を染め、ピアスをあけた。きっちりと着込んでいた服も着崩し喧嘩にも明け暮れた。
少しでもいいから自分を見て欲しかった。
ほんの少しでいいから気にかけて欲しかった。
でもそんな望みも儚く消え両親が翠を見ることは無く両親の目には出来の良い兄しか見えてなかった。
兄は翠の欲しいものを全て手に入れた。出来の良い頭も優れた運動神経も……周りからの愛情さえも…
次第に翠は何かを埋めるように拳をふるうようになった。
ただひたすらに
あいた穴を埋めるように
ただそんな事をして手に入れられるものは不良の頂点しかなかった。
翠にとってはこんな世界息苦しいだけだった。
「俺はどうしてこんな事をしているんだ…?この胸のもやもやも渦巻く黒い物も喧嘩してる時は消えるのに……今はただ苦しいだけなんて…」
そう呟いても返事は帰ってこない
ずっとひとりだから
そばにいるのはいつも倒した輩
虚しさだけが支配する
「どうして……どうして俺ばかりこんな目に遭わないといけないんだ…」
血に濡れた拳を眺めて呟く。
こんな事をして何になるかなんてわからない。でも一時的に翠の心を軽くするのが喧嘩だった。
「消えてしまいたい…」
これが翠の今の切実な願いだった
消えて存在さえなくなってしまえば苦しまずに済むから
カラッポは自分はいなくなるから
きっと
自分もみんなも
幸せになれる
そう思うから
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