第1章 誘拐

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帰ろうと思い翠はその場を立ち去ろうとした。 だけど翠は背後からの気配に気が付かなかった。 一瞬、ビリッと首に衝撃が走った 「っ……!!」 気を失う直前、翠は思った "どうせならこのまま目が覚めなければいいのに" そして翠はコンクリートの上に崩れ落ちた 月の出た夜 その綺麗な月は犯人を映し出した 高い身長に綺麗な栗色の髪の毛 その青年は大切そうに翠を抱えた とても優しい笑顔で まるで硝子を扱う時のように繊細に 「やっと見つけたよ……ずっと...ずっと探してた......僕の大切な恋人…」 彼はそう呟き闇に消えた その場には血まみれの不良と翠の鞄と携帯電話だけが残された 次の日朝、通勤の近道にその場を通ったサラリーマンによってその現場は発見された 常習犯だった翠の鞄が残されていた事で警察は翠の家を訪ねた だが、家にいたのは翠の両親に兄の3人だけ 何者かによって誘拐されたことを知らない家族や警察 しかし気に止める人は一人もいなかった 翠はまだ17歳 家に帰っていなければおかしいといえばおかしい 災いを招いたのは翠の素行 どうせ何処かで遊んでいるのだと 家族は口を揃えて言った "何も出来ない出来損ない" "遊ぶ暇なんかあれば勉強すればいいのに" "あんな出来の悪いヤツがうちの子のわけがない" 止まらない罵り 翠の事をよく知らない警察ですら 笑いながら聞いていた 狂った空間 翠のことを心配する声は少しもなかった
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