第1章 誘拐

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目が覚めてまず飛び込んできたのは知らない天井 カーテンが閉められているのか暗い部屋 翠は何が起きたのかわからなかった どこも痛くない そう思って体を起こす そこでやっと気づく 自分の首に首輪がはめられそれが鎖でベッドに繋がれている事に 「は...?んだよコレ...っ」 どれだけ頑張っても一向に外れる気配はない ジャラジャラと冷たい音だけが耳を支配する それが翠の恐怖を大きくしていく 「どこだよココ……クソッ...なんで外れないんだよっ……!!」 どれだけ音を出しても誰も来ない ベッドから出ても行ける範囲は狭い 窓から外を見ることすら出来ない しかし 絶望 その二文字と同時に 希望 この二文字も翠の頭を支配した "もしかしたらこのまま僕はいなくなれるかも知れない" きっとココで殺されるんだ 俺が誘拐されて家族が身代金とか出すわけが無い それどころか警察に連絡するかさえわからない 翠の心はカラッポで冷めきっていた そして愛情に飢えていた 幼い頃から誰にも愛されず疎まれてきた翠は愛情を知らない ただ何も無い自分に疑問をいだく 渦巻く感情を心の奥に押し込める ガチャ ドアが空いた 入ってきたのは背の高い青年 青年はふいにカーテンを開けた 日の光が眩しく目に痛い でも翠は青年の顔を見ようと薄く目を開けた 翠は青年に目を奪われた 日の光を浴びてキラキラする髪に 端正な顔立ちに 優しい目に 少しの間翠は青年に見とれていた 翠の視線に気づいたのか青年は翠に近づいた 翠を目の前にして青年はまた柔らかい笑顔で言った 「起きたんだね百合...僕の大切な百合……もう離さないよ…」 その言葉に翠は固まった 自分の名前は"百合"では無いから その青年もまた 求めているのは翠では無いと悟ったから
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