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年が明けた昭和八(一九三三)年一月十六日から始まった第十回全国中等学校選抜野球大会の選考試合で栄治は力投する。
初戦の福知山商に1-0で勝利すると、それを皮切りに八幡商に6-0、市岡中に5-0、平安中に3-0、京都師範に7-1と連勝記録を伸ばして行く。
「栄ちゃん、絶好調やで」
「応よ!山口、次も行くで」
しかし、次の対戦相手は昨年の選抜大会で準優勝を果たした明石中である。
『世紀の剛球投手』と謳われたエース楠本保がいる強豪校だ。
既に、全国区で名を馳せている楠本の豪腕は、まさに噂通りのものであった。
初回から、京都商業打線を全く寄せ付けない圧巻のピッチングを展開する。
対する栄治は、徐々に打ち込まれ点差が開き始めていた。
そして、遂に明石中打線に捕まると、味方の拙守も手伝い、栄治は一気に大量点を奪われてしまったのだ。
終わってみれば、0-17の大差で手も足も出ぬまま完膚なきまでに叩きのめされていた。
地力の差がハッキリと勝敗に表れた、京都商業の完敗である。
「ちっくしょう!次は、絶体に負けへんで」
負けん気の強い栄治は、雪辱を誓い次の平安中戦へと望む。
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