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だが、明石中に大差で負けたショックが尾を引いたのだろうか、栄治のピッチングは明らかに不調であった。
自慢の速球が、全くと言っていい程走っていない。ドロップの切れも悪く、平安中打線から連打を浴びる。
「栄ちゃん…!?」
「大丈夫や山口!次は、ぶったまげるようなごっつい“まっつぐ”を放ったる!!」
口ではそう言うが、気持ちばかりが先走り、栄治に復調の兆しが見えない事は長年バッテリーを組んで来た千万石になら、すぐに理解できた。
気持ちで投げるタイプの栄治である。心と体が合致せず、チグハグな状態のままでは本来のピッチングなどあり得ない。
結局、この試合も栄治は打ち込まれ、平安中にも0-17の大差で連敗を喫してしまう。
以前、勝利を修めた事のある相手に惨敗したのだ。悔しさも倍増である。
「山口、みんな…堪忍な」
負けん気の強い栄治も、さすがに気落ちしたのか元気がない。
確かに、二試合連続で大敗した事もショックだったが、団体競技において知らず知らずの内に一人相撲をとっていた自分の至らなさを栄治は悔いるばかりだった。
ところが、そんな京都商業に朗報が舞い込む。
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