≪栄治力投す≫

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 5勝2敗の好成績を残した事により、京都商業は見事京都府代表に選ばれ、選抜大会出場への切符を手にしたのである。  栄治にとって、三年ぶり二度目となる全国大会の大舞台だ。  三月三十日から開幕した中学選抜大会本戦、栄治はすっかりと復調し、これに挑む。  初戦に当たる関西学院中は、全国優勝の経験もある強豪だ。  しかし、それに臆する事なく栄治も負けてはいなかった。  序盤からストレートが走り、効果的に投じるドロップに相手打線のバットは空を切る。  次々に三振を奪い続け、この試合奪三振14と関西学院中を完全に抑え、6-2のスコアで下し、初戦を見事な勝利で飾った。  続く大正中は、エース藤村富美男を擁するチームである。  二回戦は両チームの投手による息詰まる投手戦となった。  初回から栄治と藤村、二人の気迫溢れるピッチングが続く。  この試合も栄治は奪三振15と力投し、それに打線が応える形で数少ないチャンスをものにすると、京都商業は3-2で大正中との投手戦を制した。  二回戦も見事に勝ち上がった京都商業、次なる準々決勝の相手は因縁浅からぬ豪腕、楠本保率いる明石中であった。
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