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時は大正六(一九一七)年二月一日、三重県宇治山田市(現在の伊勢市)の沢村賢二、みちえ夫妻の間に待望の長男が誕生する。
「お前の名は栄治や!どや、えぇ名前やろ?沢村栄治やぞ」
賢二は嬉しさのあまり、生まれたばかりの我が子に身を乗り出してほほえみ掛けるのだった。
後に数々の伝説を残す事になる大投手『沢村栄治』誕生の瞬間である──
栄治が生まれた当時、世の中は未だ世界規模の大戦争を継続している最中にあった。
後に『第一次世界大戦』と呼ばれる今時大戦は、ヨーロッパを主戦場として展開されていたが、日本も連合国の一員としてシベリアなどにいくつかの師団を派遣、これに軍事介入していたのだ。
当然、その影響は日本国内にも及び、栄治誕生の翌年には富山県から始まった米騒動が日本全国に波及し、各地を騒然とさせる。
この為、第四回全国中等学校野球選手権大会(現在の全国高等学校野球選手権大会)が中止となってしまう。
だが、そうした状況の中にあっても、栄治はすくすくと成長し、地元の宇治山田市立明倫尋常小学校へと入学する。
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