≪栄治誕生≫

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 ここで栄治は、野球好きの父親の影響もあり、彼の生涯で最も大きく関わって行く事となる野球との出会いを果たすのだ。  野球と言う競技は、栄治の性分に合っていたのだろう。  成長すると共に、栄治は野球の腕前を開花させ、グングンと上達させて行く。  そして、四年生に進級する頃にはチームのエースを任され、初のマウンドを経験する。  ところがその晩、余程気負い過ぎたのか、はたまた初マウンドで興奮したのか、栄治は高熱を出して寝込んでしまったのだ。  何とも、奇妙なものである。  その後も、栄治は着実に投手としての技量を上げて行き、小学生としては群を抜く速球で他者を圧倒し始める。 「行くでぇ、山口」 「えぇよ、栄ちゃん」  捕手、山口千万石のミットに軽快な捕球音が鳴り響く。  明倫小高等科に進級し、同級生の千万石とバッテリーを組んだ栄治、もはやその速球に対抗できる打者など地元には存在しない程であった。  そんな栄治十三歳の時、明倫小は地元宇治山田市の大会を制すると、そのまま波に乗って県大会を勝ち上がり、これを突破。  三重県代表として、遂に念願の全国少年野球大会全国大会へと出場を果たしたのである。
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