とおりすがり猫

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俺は白い犬だ。名前は「ナイ」。 今日は運が悪い。 どこのゴミをあさっても、食い物がない。 そういう日は、年に何回かある。 「ばれんたいん」だか、「くりすます」だか知らないが、そういう日の前日とかはゴミが無い。 その変わりに次の日には大量のゴミが出るので、別に俺にとっては悪くない話だ。 でも、明日より、まず今日の飯をどうするかが大事。 ずっと俺はそうだ。 ダメだ。いくら探してもゴミが無い。 俺にはゴミをあさる以外に飯を食う方法がない。 見た目がイイ奴は、ニンゲンに飯を貰う。 器用な奴は、川の魚を捕まえて食う。 頭のイイ奴は、草むらや林で食べれるキノコやら虫やらを食う。 でも、俺には無理だ。 ニンゲンに飯を貰ったのは1回しかないし。 ヘタクソだから魚も捕まえられない。 頭も。 もういい。腹が減ってるから気持ちが暗くなってる。 こういうときは寝るに限る。 そんなとき、一匹の猫が俺の寝ぐらにきた。 「よう!まだ生きてるか?」 面倒くさい。コイツは、ときどきくる野良猫だ。 名前は...なんだかいっぱいあったな。 覚えきれないし、覚える気もないので、「コイツ」か「オマエ」にしてる。 とりあえず、無視。 「なんだよ。無視かよ。挨拶してるんだから応えろよ」 オマエにとっての挨拶が「まだ生きてるか?」なのか。 コイツは俺と同じくらい口が悪い。 面倒くさい。無視を続ける。 「はぁ~。今日は飯食えてねぇ~んだろ?飯が貰える家があるから、誘いにきてやったのに」 俺は「飯」に反応して耳を立てて振り返った。 「おい、なんで俺を誘いにきた。オマエだけ行けばいいだろう」 俺は本当に飯が貰えるかどうかも気になるがコイツの考えも気になる。 コイツら猫は頭がイイから、気をつけないと騙される。 野良猫は応える。 「いや、犬と猫が一緒で行くと人間受けがいいらしい。飯が増えるって話だぜ。ほんとかどうか知りたいんだよ」 これは結構いい話かもしれない。 コイツが言っている飯が増えるかどうかは別にしても、「知りたい」というコイツの性格は分かっていたので、少しだけ納得した。 俺に得があるなら、断る理由はない。一緒について行くことにする。 野良猫が言葉をかける。 「なんだよ。結局、くるんじゃねえかよ。まったく面倒くさい奴だな」 面倒くさいのは、オマエもだ。
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