結局、こっちの願いは叶わない。

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この学校には願いを叶えてくれる〈奇人〉がおり、依頼料の代わりに〈奇人〉の願いを叶えることが条件だ。 恋愛相談から恋のキューピット役、合コンの幹事、部活の助っ人、恋人の素行調査等々、〈奇人〉の機嫌を損なわない範囲でなら何でも引き受けるらしい。 たまに厄介な依頼や第三者の反感を買うこともあるので、報酬に金品は設定しなくなった。代わりに、依頼の規模に合わせて〈奇人〉の願いを叶えさせることにし、それは下唇を噛み締めた女子生徒・森沢茜も理解していた。 「二年三組、森沢茜……森沢っていうと、二組に双子の妹がいるよな」 依頼人について知ることは犯罪でも不思議なことでもない。独りごちるように呟いたのがまずかったのか、彼女は涙一筋流し、その顔を両手で覆う事態に発展してしまった。 〈奇人〉は長い前髪と細身で女性だと勘違いされているせいで恋愛相談も少なくなく、それで手一杯な時は前髪を上げて上半身を見せれば依頼人は退散するか、きょとんとしたまま本来の依頼を持ち掛ける。 だが、森沢茜は彼を男だと判っていて己の恋愛について話し始めた。
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