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好きな人がいる。
その人は、年上で知的な方で、嘘が嫌いらしい。
そして、可愛らしい女性が好きだとも。
「でも、私は一重で可愛くないから叶うはずもないんです。でも、一度でいいからあの人の傍にいたいなって思って……妹のふりをしたんです」
「あぁ、目がぱっちりな明るい子ね。ーーいやっ、だからといって、君が可愛くないって言ってるわけじゃなく、君は君で可愛いよっ」
「……いいです、自分が可愛くないのは重々承知です。人は見た目じゃないって思いつつ妹のふりして……はぁ、好きな人に嫌われる……」
話し出したわりには本題になかなか入らないので、折角出した冷たい麦茶がすっかり温くなっていた。
彼も苛立ちを募らせ始め、あと五分以内に本題に入らなければ舌打ちをして追い返そう、そう決意した刹那。
「……この前、妹が友達と旅行に行ったのをいいことに妹に成り済まして街に出掛けたんです。そこで好きな人に出会して、自分じゃないから話も弾んで、今度また学校で話そうねって別れて……」
「それなら、そいつは、あの日会ったのが君じゃないって今頃気づいてるんじゃないのか?」
「いや、意外と気づいてないっぽいんです。あの人、授業以外で生徒と関わるの好きじゃないから……」
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