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リンは玉座に来ていた。
そして蹂座の元へまで行きこう言った。
「市架の顔をまだちゃんと見てないの。もう一度私の手でその子を抱かせて。
娘のことは......諦めたわ。」
リンは息子の顔をもう一度しっかり見るために、一旦預からせて欲しいと懇願する。
「......」
蹂座は何も言わず、側にいた兵士に合図すると
奥から市架(いちか)を抱えた兵士がこちらに向かってくる。
そして市架をリンに手渡した。
「きゃっ、きゃっ!!」
市架は無邪気な声を出してこちらを見ている。
リンはこれ以上ない程の笑顔でそれに応え、市架を
抱えたまま寝室に戻った。
蹂座は生まれてくる子にあらかじめ「市架」と名付けていた。
名前からして息子が生まれてくることを信じて疑わなかった。
寝室に戻るとすぐに、リンは用意しておいたガイアの聖水を手に取る。
南波家に代打伝わる聖水、それが寝室の隠し扉に管理されていることをリンは知っていたのだ。
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