かず

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かず

――杉先生だ!! 我が高の女神、音楽の杉先生が、 どしゃ降りの空を見上げて、頼りなさげに職員通用口に佇んでいる! こっ、ここここれは、神が与えたもうた、千載一遇のチャーンス!! さあ勇気を出すんだ俺!! 俺の傘をさしかけて、 『先生、良かったら駅まで入れて行きますよ』 『あら柴谷君、ありがとう助かるわ』 遠慮がちに俺の傘に入る先生。 『先生、もっとこっちに寄らないと、俺が濡れちゃうよ』 『えっそう?』 ふんわりと傘の中に香る、先生の匂い。 やべー、こんなトコでコーフンしては、一発で嫌われてしまう。 でもつい口に出てしまう俺。 『先生、いい匂いするね』 『いやぁね、何にも付けてないわよ?』 『そうなの?でもスッゲーいい匂い』 先生はほんのり頬を赤らめる。 いいぞいいぞ俺! 話題…話題… 『先生の音楽の授業、俺、好きだな。面白い』 『本当に!?嬉しいわ柴谷君♪』 『こないだのベートーベンの話、面白かった』 ――と、通りを猛スピードで走る車が……!! 『先生、危ない!!』 俺は思わず車道側に背を向けて、身体を張って盛大な水飛沫から先生を庇う。 『きゃー!!柴谷君!!』 『マナーの悪い車だよね、先生』 『大丈夫!?ずぶ濡れよ』 『大丈夫大丈夫、先生が濡れなかったらそれでOK』 『優しいのね柴谷君』 先生は綺麗なレースのハンカチを取り出し、俺の背を拭いてくれる。 『いいよ先生、ハンカチが勿体ないよ』 杉先生は、心配そうな目をして俺の顔に手を伸ばし、髪を、頬を、拭いてくれる。 先生の手のひらの温度が、俺の頬に…… ――ぴたぴた、ぴたぴた―― 「……柴谷、おい柴谷、大丈夫かよお前。 うわ、きったねー! ヨダレが手についたじゃんか!!」 「んあ? 何だよ門田、いいところで」 悪友門田が、俺の制服で手を拭いながら、俺の視線の先を追っている。 「おっ、誰かと思えば、杉ちゃん雨宿りじゃーん♪ 傘無いのかな。俺、相合い傘に誘っちゃおっかな~」 「――門田!! 一生の頼みだ!! 俺にその傘、貸してくれ!!」 「やだよん」 ……杉先生。傘を持ってない俺を、許して下さい…… 妄想tomete劇場、Fin.
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