第1章

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「新婚に、仕事は野暮なのではないの?」 「いや、暴れられるのに、誘わなかったらキレる人でしょうよ」  それは、その通りで、死の寸前でも戦うのが鬼同衆であった。  孝太郎が出現すると予測されている場所は、無人の星であった。その位置が、幸太郎が最後に消えた場とリンクしていると言われる。  無人であるので、人払いさえすれば、吹っ飛ばせるのではないのか。 「梶佐古、政府へ許可を取れ。星を吹っ飛ばす。纐纈、宇宙船の用意を頼む。大和から一機借りておけ。資材は榛名に任せるとしてだ、 三改木、爆弾の調達は頼む」  爆弾がなくても、爆弾のような存在なのだが、用意はしておいたほうがいい。 「了解」  このメンバーは、歩く導火線であった。  夕食を済ませると、部屋に戻る。しかし、大和は翔一の接待だと言って戻って来なかった。  仕事の前なので、大和とじっくり過ごしたかった。  屋根に上って、星を見ていると、ため息をつきながら、大和が屋根に上ってきた。 「五羅、風呂、できていますよ。明日から仕事でしょう、ゆっくり入ってください」  風呂だけ告げると、大和が又、戻ろうとする。 「大和、横に座りな」  命令すれば、大和は従う。 「大和、孝太郎の出現場所はどこだと思っている?」  大和は、鬼同丸から地上を見ていた。 「出現場所は、分かりませんが、行く場所は分かっています。幻影塾とビナマナカハナです」  でも、出現場所も重要ではあった。 「孝太郎が亜空間を閉じたら、中にいる人が潰れる。俺は、仲間を救出したい」  それは、大和も同じ思いであった。かつて、一緒に大和も亜空間に飲まれた。それから救出を続け、消えていった人も多く見てきた。 「……心吾(しんご)の亜空間が鍵だと思うのですよ。心吾は、亜空間で重なり合った人間で、人間として比重が高い。その重なりの中に亜空間がありました。ゲートキーパーに属さない亜空間」  そこに、仲間を移動し救出すると、大和はいう。しかし、心吾が新人であり、まだ亜空間を扱いきれていない。 「必要なのは、時間です」  二十三年間も、亜空間に閉じ込められていたのに、まだ時間が足りないのか。 「一羅は、一人で孝太郎の亜空間を制御しようとして、弱っています。俺も手を貸したいが、何しろ、半分ですからね」
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