第1章

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 大和の半分というのは、大和は火の屋の血を継ぐゲートキーパーで、この世界に半分、亜空間に半分を存在させることで、亜空間を得ている。  心吾の比重が重いなら、大和は軽い。亜空間を自在に得られる代わりに、他の空間に引きよせられやすいのだ。 「孝太郎に引き寄せられたら、俺は、即、行ってしまいますからね……」  一羅の手伝いどころか、足手まといにしかならないと、大和は下を向く。  俺は、孝太郎に大和は渡さない。孝太郎に大和を渡してしまったら、孝太郎が無敵になってしまう。孝太郎は、天才と言われた亜空間使いであり、大和は奇跡の無限と言われるゲートキーパーであった。  屋根の上であるが、大和を引き寄せると、唇を寄せる。キスまでは、大和も許してくれる。手で、大和の胸や腰に触れ、じっくり深く舌を差し入れる。  時折、金色に光る大和の目が、又、深い紫になる。絡まった舌の熱さが、俺を妙に正気にさせる。  この腕の中の存在が、俺を、この世界に留めている。大和がいなかったら、俺は、孝太郎と相討ちだけを望んでいた。  大和の待つ、鬼同丸が俺の全てであり、この腕にいる存在が俺の命であった。 「愛しているよ……大和」  ふいと顔を背ける大和は、顔が真っ赤になっていた。 「俺には、時季と響紀がいる……」  それは、最初から知っていた。 「分かっているけれど、大和、愛している」  幻でもいい、大和を抱きたい。 「……部屋に移動しよう」  大和を抱き上げて、部屋に移動したのだが、部屋には別の問題が生じていた。 「ノノノウ?どうした?雪緒も……」  熊が、発情期のようであった。熊が興奮して、部屋の中を歩き回っていた。 「どうも、紫狼さん。雪男ではなくて、その、熊の姿の時は雌のようなのです」  雪緒の説明によると、稀に、人間では男性で、熊になった時は女性というケースがあるらしい。その場合は、人間の時も、女性的でもあった。 「で、雌が発情期に入ると、雄としては、どうしようもなくて……」  獣の世界になってしまっていた。もう、好きとか嫌いではなく、発情期なのだそうだ。 「この場合は、生まれてくるのは、何になるの?」  大和も、理解できていないようであった。 「熊の姿のままで、お産になります。産むのは熊ですが、成長により、俺のようになるのか、熊になるかが決まります」  熊が増えるということなのか。
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