第1章

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 俺は、大和の背を見ながら、帰りたい場所を確認してみた。やはり、ここに帰ってきたい。狭く熱く、締め付けて絡みつく。どこよりも、大和らしく、相手を受け入れようと必死にみえる。  こんな場所で愛し合うのは邪道とも思うが、どこまでも深く、そして本能で繋がりたいのだ。 「すまん、入れる」  ここが、俺の居場所であった。受け入れられない、大和が溺れるように足掻いていた。じっとりと寄せ、やや力任せに開いてゆく。やはりというのか、たやすくは開いてゆかない。 「……五羅、早い。……まだ、ダメ」  あと少しで、半分か。慌てる大和が、ベッドにしがみ付く。その手に、自分の手を重ねる。 「痛い!五羅、ダメ……」  唸っている大和に、残りをゆっくり埋め込んでゆく。ここに俺がいる。 「大和、俺がわかるか?」 「……分かるよ……」  ゆっくりと、でも確実に、ここに俺を刻む。 「腹が重いし、切れそう……」 「いいね」  どこがいいのかと、大和が文句を言う。夢ではない、これが大和であった。 「俺は、時季と響紀を選ぶからね。絶対に五羅を選べない」  仲間優先で、誰よりも泣く。それでいいのだ。でも、ここには俺を覚えさせる。 「じゃ、動くかな」  動き出すと、大和から小さく悲鳴があがる。でも、ギチギチだった箇所も、少し慣れてきたようであった。 「五羅、約束だからな。絶対に帰って来いよ」 「おうよ」  帰ってきて、又、しなくてはいけない。  この愛おしい体を慣らしてゆきたい。絞るだけのここを愛欲の場所にしたいが、まだ先になりそうであった。結構、きつい。 「いや、あっ、痛い!」  痛いのならば、締めるなと言いたいが、必死の姿を見ていると、言えない。 「下手くそ!」  それは、どっちなのだ。俺は、これでも、男女ともに経験は多い。こんなに、拒絶されたこともない。 「いっ、て。ダメ、早く、終わらせて……」  喘ぎ声が聞きたいが、罵倒と悲鳴に消されてしまう。悲鳴はいいが、罵倒は悲しい。 「終わったら、さっさと出して」  情緒もない。 「しかし、時季と響紀、よく頑張ったな」 「まあね」  疲れたのか、大和が転がりながら、俺から離れようとする。俺が、腕を伸ばすと、嫌そうに大和がこっちを向いた。 「そんなに、嫌そうな顔をしなくてもいいだろ」 「こんなに痛いのは初めてだよ。中がダメみたいだ。薬を塗ってくる」  嫌なのではなく、痛いのだそうだ。
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