第1章

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火の華 天陽不座 番外編 第一章 雪の華  宇宙で五本指に入る規模と、実績を誇る、セキュリティ及びシークレットサービスを提供する組織、鬼城家。  俺は、鬼城 五羅、この鬼城家の一員として生まれ育った。今の鬼城家の頭領は、鬼城 一羅、俺の兄になる。  大犯罪人、孝太郎を追い亜空間に入り、戻ってみたら二十三年が経過していた。俺だけではなく、俺のチーム及び、所属している組が全員、二十三年前の姿のままで、現在ここに存在している。 「五羅様、鬼城の頭領が呼んでいますので、早くご支度してください」  無理やり、同居に持ち込んでいるのは、鬼城 大和、一羅の養子で、血縁関係は全くないが、俺の甥にあたる。  この大和が、もの凄く厄介な存在で、しかも、可愛い。可愛いといっても、ぬいぐるみや少女の可愛いではなく、俺にとって存在が可愛い。  真向から勝負してくる性格と、こうやって仕えているアンバランスが、とても微妙でついからかいたくなる。 「様はいいよ。呼び付けでいい。大和は、今日から祭りの準備か?」  鬼城は、もうすぐ祭りの期間に入る。 「はい。神輿のメンテと、花火の準備をするつもりです」  大和は、黒髪に紫の瞳で、絶品の美形である。例えれば大和は、完璧な理想を目指し造られた、精巧な人造の人形のようなのだが、見た目と異なり、戦闘能力は高い。つまりは、怖い。 「なあ、大和、出勤前のチューしてもいいかな?」  大和が瞬間で真っ赤になる。この真っ赤は、照れているわけではない。 「寝坊してきて、何が、チューですか!」  大和が、真っ赤になるのは、相当怒っている。  それもそうで、同居に持ち込んでいるが、大和には恋人がいる。俺が、大和に惚れこんで、鬼城の組、鬼同丸の頭領であることをいいことに、同居に持ち込んだ。決して、同棲ではなく、肉体関係はない。  俺としては、早く、肉体関係に持ち込みたいのだが、それが、大和が厄介な理由で、強いのだ。 「はい、チューね」  大和を抱き込み、無理やりキスしてみると、周囲に銃弾が降ってくる。次に、周囲が爆破されていた。  咄嗟に、部屋から亜空間に移動しておいて正解であった。部屋を吹き飛ばされるところであった。  でも、この紫の目に、悔しさで涙が浮かぶ様子を見ることができるのならば、部屋の一つや二つ、爆破されても惜しくはない。
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