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「そうです。でも、鉄鎖からは外れています。今は、孔雀と呼ばれる新参の組に属しています」
黒須とケンカになり、飛びだしたのだそうだ。
「……名前は?」
「本名は、黒須 紫狼(しろう)なのですが、自分で雪華(せっか)と名乗っています」
こんなのを預かったら、百武はともかく、大和に何と言われるか分からない。俺も、寝室にまで潜り込む熊を何とかしろと、大和に何度も言っている。それなのに、熊を増やしていいものか。
「なあ、黒須……俺のところは、男所帯だろう、女装でも女性っぽいのは、どうかと思うぞ」
「紫狼の、あの姿ですから、俺は紫狼の恋人が男女どちらでも、驚きませんよ」
そういう問題なのか。
「まあ、紫狼に鬼同丸に行ってみろと言っておきますので、よろしくお願いします」
黒須が、笑いながら去って行った。
で、鬼同丸に帰ってみると、紫狼は、花魁の姿のまま大広間に座っていた。
「五羅様、これは、どういうことですか?あの女性は何ですか?」
百武が、怒って俺を睨んでいる。百武には、新人や鬼同丸の全体の運営を見て貰っている。真面目な性格で、面倒見もいい。
「ファンタスチック!」
誰だ、こいつは。花魁に駆け寄る、身なりのいい男性は、しきりに花魁を口説いていた。
「こっちは、誰だ?」
「彼は、翔一・ゼン・ゼンダ。ゼンダ家の長男で、大和が契約しているのですよ。セキュリティー等の支援を貰う代わりに、祭りの時は大和と時季と響紀の貸し切りで接待です」
ゼンダ家は、宇宙一と言われる、セキュリティソフトを開発している。大和は、そんな人とも契約していたか。
「で、五羅様。この女性は何ですか?」
「黒須の弟で、黒須 紫狼。雪華と名乗っているらしい」
「弟?」
百武が、まじまじと紫狼を見ていた。どこから見ても、美女としか言えない。翔一も同じらしく、花魁の手を引いて、離れへと向かっていた。
「翔一は、離れで接待しているのか?」
「はい。大和の部屋を使用しています。大和は五羅の部屋にいますからね」
百武に、チクリチクリと嫌味を言われる。
「それよりも、花魁をそのままで、大丈夫ですか?」
「S級だそうだから、大丈夫だろう」
台所に行き、つまみを選ぶと、酒を出す。部屋に戻ろうと思ったが、やはり、様子を見てくるか。
離れに向かってみると、時季と響紀が、廊下で固まっていた。
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